ハレという言葉は、現代では存在感が薄れてしまいましたが、かつては、日常とは異なる特別な意味を持っていました。たとえば、神社の祭礼、正月や節供、盆、冠婚葬祭などがこれにあたり、そういった日を「晴れの日」と呼んでいました。晴れ着や晴れ姿、晴れ舞台などの言葉はその名残です。
そのハレの日に欠かせない食べ物として、サトイモは古くから重要な役を負っていました。月見の宴の儀礼食や、正月の雑煮などに使われるだけでなく、正月でも餅を食べないという「餅なし正月」の習俗が伝わる地域では、餅の代わりとして食べられます。
また、正月の歳神(としがみ)や神棚にサトイモを供える地域も数多くありますが、こうしたことが「ハレ」の食べ物といわれる由縁です。
サトイモの原産地は明確でなく、インド説、インドとマレーシア説、インドネシア説などさまざま。日本へ渡来した時期も定かではありませんが、イネよりも早い縄文時代中期と推測されています。ちなみに、イネの渡来は縄文晩期といわれています。
そんなことから、サトイモはダイコンやマメ類とともに、日本最古の野菜といわれているのだそうです。
古来、先人たちのいうイモとはヤマイモを意味していました。つまり、イモと言えばそのままヤマイモをさしていたのです。しかし、これでは何かと不都合。というわけで、奈良時代には、ヤマイモとサトイモを区別するため、サトイモのことを「家つウモ(イヘツウモ)」と呼んでいました。ウモというのは、奈良時代でのイモの呼称です。
サトイモと呼ばれるようになるのはずっと後の世、室町時代末期からと推測されています。「山のイモ」であるヤマイモに対し、「里のイモ」、サトイモとなったことは言うまでもありません。
現在、主な産地は、全国生産量のおよそ4割を占める千葉県を筆頭に、埼玉、栃木、宮崎の各県の順に続きます。
イラスト版食材図鑑 子どもとマスターする〈旬〉〈栄養〉〈調理法〉/赤堀栄養専門学校