この地下鉄に使われた動力機関は、驚くことに電車ではなく、燃料を燃やして走る方式を採用していました。ただし、使われた燃料は石炭ではなく、煤(すす)や煙が少ないコークスというものでした。
とはいうものの、やはり煙突は必要で、路線の各所に排煙用の穴が設けられ、駅には天井を作りませんでした。それでも列車内には臭いがこもり、「下水鉄道」などという、ありがたくないニックネームを授かっていたそうです。ちなみに、照明も電灯ではなく、ガス灯でした。電気機関車が登場するのはずっと後、17年後の1890年のことで、場所は同じロンドンでした。
これ以後の主な地下鉄開通を誕生順にあげると、ハンガリーのブダペスト、イギリスのグラスゴー、アメリカのボストン、パリ、ドイツのベルリン、ニューヨーク、アルゼンチンのブエノスアイレス、モスクワと続き、ここまでが、世界初の地下鉄誕生からちょうど70年間のこと。
ここで第二次世界大戦を挟み、その後スウェーデンのストックホルム、イタリアのローマ、中国の北京、韓国ソウル、釜山というぐあいに続きます。
日本はどうかというと、昭和2年に開通した、上野・浅草間の2.2キロが最初で、その6年後に大阪で開通した、梅田・心斎橋間の3.1キロが二番手。ほかにも建設計画はあったものの、第二次世界大戦の激化に阻まれ、しばらくはストップしてしまいます。
そして戦後、東京や大阪では路線の増加が加速し、ほかの大都市でも開発が始まります。現在、名古屋、札幌、横浜、神戸、京都、福岡、仙台で地下鉄が走っています。
ちなみに世界では、およそ70の都市で普及しているそうです。
東京メトロのひみつ
日本の地下鉄 (イカロス・ムック)