白鳥は世界に7種が生息していますが、日本へ飛来するのは大白鳥と小白鳥の2種だけです。皇居の濠(ほり)や公園などで見かける白鳥は、ドイツから輸入されて繁殖した瘤白鳥(こぶはくちょう)と呼ばれる種で、渡り鳥ではありません。このほかに、鳴白鳥(なきはくちょう)、黒襟白鳥(くろえりはくちょう)、アメリカ白鳥、そして、文字通り異色の存在とも言える黒い白鳥、「黒鳥(こくちょう)」の4種がいます。
白鳥が登場する有名な古典バレエに、「白鳥の湖」があります。台本はベギチェフとゲルツェルの2人によって書かれ、これをもとにチャイコフスキーが作曲したものです。
4幕からなるこのバレエのストーリーは、およそ次のようなものです。オデットという名の王女が、魔法使いのロットバルトによって白鳥に変えられてしまいます。人間の姿に戻れるのは夜の間だけ。そこへ登場するのが、オデットに恋をしたジークフリートという王子で、彼は熱い愛情によって魔法を解き、めでたく王女と結ばれるいうものです。
このバレエは、振付師ライジンガーの振付けにより、モスクワのボリショイ劇場で初演されましたが、興行は失敗でした。ところが、それからおよそ20年後、1895年に、ペテルベルグ、現在のレニングラードのマリンスキー劇場で、プチパとイワノフの師弟コンビによる振付けで改訂版を上演したところ、大成功をおさめたのです。
その後も振付けや演出が何度か改訂されながら上演が続けられ、次第に人気が定着していきました。改訂の際には物語の結末が変更されたこともあり、王女と王子が悪魔を討ち果たして結婚するものや、2人の死によって結ばれるものなど、いくつものパターンがあります。
ところで、このバレエには黒鳥も登場しますが、白鳥が王女オデット役であるのに対し、気の毒なことに黒鳥は、王子を誘惑する悪役、魔法使いの娘オディール役になっています。
ボリショイ・バレエ「白鳥の湖」(全幕)(DVD)
ラベル:チャイコフスキー