卒業式では、言葉では表せないほどの感動におし包まれる一方、友人と離ればなれになるなどで、つらい思いをすることになる人も少なくありません。
そうした別れを惜しみ、寂しさを歌った惜別の歌が、蛍の光という曲です。
この歌が世に出たのは明治14年のこと。文部省の音楽取調掛(とりしらべがかり)が編集した小学唱歌集に、「蛍」という曲名で発表されました。
今日では、卒業式には欠かせないほどに定着した名曲ですが、じつは、もともとは外国の曲でした。原曲はスコットランドの民謡で、これに18世紀の詩人、ロバート・バーンズが詩をつけた「Auld Lang Syne」、日本語で「久しき昔」という曲でした。
バーンズの詩は、久しぶりに顔を合わせた幼なじみとともに、いっしょに遊んだ少年の日々を思いだしながら、酒を酌みかわすという意味のものです。
日本語の歌詩はバーンズの詩を訳したものではなく、当時の日本の社会的背景をもとに、日本向けに作詞されたものです。
「ほたるの光窓の雪」の言葉は、日本では「蛍雪」とも表されますが、意味は中国の故事に由来しています。晋の車胤という学者は家が貧しくて油を買うことができず、夏の夜は錬り絹の袋にたくさんの蛍を入れてその光で勉強し、また、同じく貧しかった孫康は、冬の夜、窓辺の雪の明かりで書を読んだというものです。
この故事は江戸時代の武士の教育などに採り入れられていて、このようなことから歌詞にも登場したようです。
四番まである詩の一部には、軍国主義をにおわせる言葉もありますが、現在は一番と二番だけが歌われ、単に惜別の歌として歌われています。
日本語の歌詞の作詞者は長い間不詳でしたが、今では稲垣千頴(いながき・ちかい)という人と判明しています。
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ラベル:卒業式